コンクリートの調合設計(配合設計)とは

概要

コンクリートは、セメント、骨材、水、混和材料等、から構成されています。
コンクリートの性質は、材料の品質、材料の混合比率に大きく影響を受けます
この混合比率を土木分野では配合、建築分野では調合といいます。

このページでは、調合(配合)と表現します。
なぜ、調合か配合かに統一されないかは、詳しく知りません。
建築も土木もそれぞれの言い分があるのだと思います。
なぜ、二つの言葉に別れてしまったのかは、
明治維新のころにコンクリートが輸入されたときに
mix proportionを
建築の技術者と土木の技術者それぞれ調合・配合と
同じ意味の言葉を別々の言葉に和訳してしまったため、
と学生の頃に習いました。

 
土木技術者、建築技術者ともにプライドをもって訳したから
自分たちの仕事に責任があり、
お互いに譲れないまま今に至ったのかもしれません。
日本産業規格(JIS)は、「配合」を使ってますね。

良いコンクリートとは

フレッシュな状態では作業に適する流動性があり、
均質で材料分離が生じにくく、
硬化後は、所要の強度・耐久性を有していて
かつ、経済的であること、です。
この良いコンクリートの性能を満たすように
材料の混合割合を決定することを
コンクリートの調合(配合)設計といいます。

コンクリートの調合(配合)設計の手順

粗骨材最大寸法の設定

スランプ・空気量の設定

調合(配合)強度の設定

水セメント比の設定

単位水量の設定

単位セメント量の設定

細骨材・粗骨材量の設定

試し練り

調合(配合)設計完了

粗骨材最大寸法

粗骨材の最大寸法は、構造物の種類、部材の最小寸法、鉄筋のあき寸法
かぶり厚さなどを考慮して決定されます。

粗骨材最大寸法が大きいほど
所要のスランプを得るのに必要な単位水量が少なく済みます
所要の強度を得るのに必要な単位セメント量を減らせるので、
乾燥収縮・クリープの減少にも有効です。

 
土木では、150ミリ、80ミリ、40ミリ、25ミリ、20ミリ
建築では、40ミリ、25ミリ、20ミリ
が一般的です。

【関連記事】<粗骨材最大寸法とは><コンクリートのクリープとは

スランプ・空気量の設定

コンクリートのスランプは、作業に適するワーカビリティを得られる範囲で
できるだけ小さい値を選定します。
空気量は、空気量が多くなると、耐凍害性が大きくなったり
ワーカビリティの改善につながりますが、あわせて強度の低下も生じるので、
要求されるコンクリートの性能に応じて選定します。
だいたい4~7%程度が標準です。

【関連記事】<ワーカビリティ・スランプとは

調合(配合)強度の設定

コンクリートの調合(配合)強度は、現場におけるコンクリートの強度のばらつきを考慮し
設計基準強度をもとに設定されます。

コンクリート標準示方書(土木学会)

JASS5(日本建築学会)

どちらも、設計基準強度をもとに小難しい計算式で、割増強度を設定して
調合強度を算出しています。
結局やりたいことは、ばらついて強度が低く出ても
設計基準強度を下回らない確率を95~96%以上になるように、
調合強度を割増しておく。ということです。

【関連記事】<コンクリートの設計基準強度とは

水セメント比の設定

コンクリート標準示方書(土木学会)

水密性を考慮する場合は、水密性に基づく水セメント比
圧縮強度に基づく水セメント比
耐久性に基づく水セメント比のうち
もっとも小さい値のものとし、
水密性を考慮しない場合は、
圧縮強度に基づく水セメント比
耐久性に基づく水セメント比のうち
小さい方の値とします。

JASS5(日本建築学会)

セメントの種類と供用期間の級によって
それぞれ水セメント比の最大値が規定されています。
最大の最大値は65%
超長期では50%が標準に規定されています。

【関連記事】<水セメント比とは

単位水量の設定

コンクリートの単位水量は、
作業が適切に行える範囲で(=所要のスランプが得られる範囲で)
できるだけ少なくなるように設定します。
土木・建築ともに最大値が規定されており、
コンクリート標準示方書では、スランプ16cm以下のコンクリートは175㎏/m^3以下
JASS5では、185kg/m^3以下とすることを標準としています。

【関連記事】<単位水量とは

単位セメント量の設定

単位セメント量は、単位水量と水セメント比から計算して算出します。
単位セメント量は要求される耐久性や構造物の特性に応じて標準値が規定されています。

土木構造物に用いられるコンクリートでは、280~300kg/m^3程度。
海洋コンクリート構造物では、280~330kg/m^3
舗装コンクリートでは、280~350kg/m^3
ダムのコンクリート(有スランプ)は、130~220kg/m^3
硬練りコンクリート(RCD)では、120~130kg/m^3

建築物に用いられるコンクリートでは
単位セメント量の最小値を270kg/m^3
軽量コンクリート(設計基準強度27N/mm^2以下)では320kg/m^3
軽量コンクリート(設計基準強度27N/mm^2より上)では340kg/m^3
水中場所打ちコンクリート杭では、330kg/m^3
水中地中梁コンクリートでは、360kg/m^3

【関連記事】<単位セメント量とは

細骨材・粗骨材量の設定

単位水量・単位セメント量が設定されると、
1m^3あたりのコンクリートを製造するのに必要な全骨材の絶対容積が求まります。
この全骨材量と細骨材率(s/a)によって細骨材の絶対容積と粗骨材の絶対容積が算出できます。

細骨材率はコンクリートの適正なワーカビリティを得るのに重量なファクターです。
細骨材率が適正であれば、硬化したコンクリートも良好な性能をもたらします。

コンクリートの圧送性をよくするために
細骨材率を高くする傾向がありますが(分離による圧送管の閉塞リスクを下げる目的)、
むやみに細骨材率を上げると、単位水量が増え、硬化コンクリートの強度低下や
乾燥収縮によるひび割れなど、品質低下のリスクが上がります

最適細骨材率は、骨材の粒形・粒度、粗骨材の最大寸法、混和材料などによって異なり
所要のワーカビリティが得られる範囲内で、単位水量が最小となるように試験によって定めます。

【関連記事】<細骨材率とは

試し練り

計算で求めた調合(配合)のコンクリートが、
ワーカビリティ、スランプ、空気量、圧縮強度、ヤング係数、乾燥収縮率、水和熱
その他、必要な性能・品質を有しているかどうか確かめるために
現場の条件に即した計量方法、練り混ぜ方法で試し練りを行います。

調合(配合)の管理

試し練りによって決めた調合(配合)を用いて
コンクリートの工事を行う場合、各種試験・検査を行って
その品質が常に所要の範囲にあることを確かめながら工事を進めて行くことになります。
材料の品質やその他の条件が変化して、
コンクリートが所要の品質を満足できないことがわかった場合には、
現場の調合や、計画調合を修正し、
常に所要の品質が得られるように調合を管理する必要があります