硬化したコンクリートの性質

概要

コンクリートが木材や鋼材などの構造材料と本質的に異なる点は
コンクリートは、大小の骨材粒をセメントペーストで結合させた
複合材料であることです。
そのため、コンクリートの品質は、セメントペースト、骨材を構成する
個々の材料の品質に左右され、またそれらの複合特性にも左右されます。
この複合特性は、施工や養生、材齢などの条件に大きく影響を受けます

強度特性

コンクリートの圧縮強度
コンクリートは圧縮に強い材料です。
コンクリートの強度は圧縮強度で表します

コンクリートの設計基準強度とは

構造設計のときの基準とした、コンクリートの圧縮強度(\(N/mm^2\))のことです。
呼び強度、品質基準強度、調合強度、などを設定する際、
基準となるコンクリートの圧縮強度です。

圧縮強度に影響する要素

材料の品質

比表面積の大きい(=粉体量の多い)セメント⇒コンクリートの粘性(大)⇒圧縮強度(大)
軟質な低強度の粗骨材⇒圧縮強度(小)
粗な表面をもつ粗骨材⇒セメントペーストの食いつき(大)⇒圧縮強度(大)
富調合のコンクリートは、粗骨材最大寸法が大きくなるほど
強度が低下します。
セメントペースト同士の結束が強いので
粗骨材の強度がそのままコンクリートの強度に反映されてしまうためです。

調合(配合)

混和剤(AE剤、減水剤など)を使って
単位水量を小さくすると
強度の高いかつワーカビリティの良いコンクリートが得られます。

施工方法

練り混ぜ不足は、強度低下の原因になります
硬練りのもの
骨材寸法の小さいもの
粉体量の多いもの
ほど、練り混ぜ時間を長くする必要があります

振動機を使って締固めをすると
硬練りのコンクリートは強度が大きくなる傾向がありますが
軟練りのコンクリートはその効果が小さいです。

コンクリートは成型時に加圧すると強度は大きくなる傾向にあります

材齢

コンクリートの強度増進は、7~14日目ぐらいまでが特に大きく
28~91日目くらいで強度の増進は安定します(ほとんど終わる)。

養生

上記の材齢による強度増進は、湿潤状態に保って養生した場合です。
コンクリートを若齢時に乾燥させてしまうと
見掛けの強度は一瞬上がりますが、強度の増進が進まなくなります。
養生温度が高いと、初期材齢時に強度は大きくなりますが
長期材齢の強度は小さくなります。
これは、養生温度が高い場合、
ゆっくり反応するのを妨げる水和物が生成されやすいためです。

コンクリート圧縮試験

コンクリートの圧縮強度は、載荷最大荷重を断面積で割った
単位面積当たりの荷重を圧縮強度とします。
単位:(\(N/mm^2\))

試験をする供試体は、直径に対して高さの比が2の円柱形状のもの
100φ×200mm、125φ×250mm、150φ×300mm
が用いられるのが一般的です。

供試体形状と圧縮強度の特性

供試体の直径に対する高さの比を小さくすると(通常1:2です)
得られる圧縮強度は大きくなります
⇒ずんぐりな形状の方が見掛けの強度が大きくなります。

供試体のボリュームが大きくなると
圧縮強度は小さくなります。
⇒欠陥が入り込む余地が大きくなるためです。

試験時の載荷速度が速くなるほど見掛けの圧縮強度は大きくなります

圧縮強度以外の強度

コンクリートは圧縮に強い材料ですが、
それ以外の荷重にも、若干耐力を有しています。

 

図_圧縮力・引張力・曲げ・せん断力

引張強度

圧縮強度の1/10~1/13程度です。
圧縮強度が高強度になればなるほど
引張強度の比は小さくなる傾向にあります。

曲げ強度

圧縮強度の1/5~1/8程度です。

せん断強度

圧縮強度の1/4~1/6程度です。
コンクリートの引張応力度の2.5倍程度と言われています。

支圧強度

部材の一部に局所的に圧縮力を受ける場合の圧縮強度を
支圧強度といいます。
支圧強度は、圧縮強度より大きくなる傾向があります。

 
コンクリートの強度の大きくなる順に並べると、
支圧強度>圧縮強度>せん断強度>曲げ強度>引張強度
となります。

変形特性

応力・ひずみ曲線

コンクリートは完全な弾性体ではないので
応力・ひずみ曲線の直線部分は少ないです。

  

図_コンクリート、コンクリートを構成する材料の応力・ひずみ曲線

 

セメントペーストと骨材の応力・ひずみ曲線は
最大応力に到達するまでほぼ直線とみなすことができます。
モルタルやコンクリートは、低応力の段階から曲線になります。

コンクリートのヤング係数(弾性係数)

コンクリートのヤング係数は、実験式から求めます。
いくつか実験式がありますので、紹介します。
どちらの式も、
コンクリートの重量(質量)と
コンクリートの設計基準強度(圧縮強度)を
パラメータとしています

コンクリート工学会式

 \(E_{1/3}=1430×ρ^{1.5}×\sqrt{F_c}\)

 \(E_{1/3}\):弾性係数(\(N/mm^2\))

 \(\rho\):コンクリートの単位体積質量(\(ton/m^3\))

 \(F_c\):コンクリートの圧縮応力度(\(N/mm^2\))

日本建築学会式

 \(E_c=3.35\times10^4\times(\Large{\frac{\gamma}{24}}\)\()^2\times(\Large{\frac{F_c}{60}}\)\()^{\frac{1}{3}}\)

 \(E_c\):コンクリートのヤング係数(\(N/mm^2\))

 \(\gamma\):コンクリートの単位容積重量(\(kN/m^3\))

 \(F_c\):コンクリートの設計基準強度(\(N/mm^2\))

単位容積重量:23kN/m3
設計基準強度:30N/mm2
としてそれぞれヤング係数を計算すると、
\(E_{1/3}\)=27320(\(N/mm^2\))
\(E_c\)=24419(\(N/mm^2\))
と、そこそこ近い値になります。
十分に硬化したコンクリートのヤング係数は、
鋼材(205000)の1/10、よりいくらか大きい値となります。

 
コンクリート工学会式と日本建築学会式で、値が異なっていますが、
研究が深まると、最適化が進むかもしれません。

コンクリートのクリープ変形

【関連記事】<コンクリートのクリープとは

乾燥収縮とは

モルタル・コンクリート内の水分が蒸発して乾燥すると収縮します。
これをコンクリートの乾燥収縮といいます。
乾燥収縮は、コンクリートのひび割れの原因になりやすいので
対応には注意が必要です。

乾燥収縮に影響する要素

単位水量が少ないほど⇒乾燥収縮(小)
骨材のヤング係数が大きい(=骨材が硬質な)ほど⇒乾燥収縮(小)
部材寸法が大きいほど⇒乾燥収縮(小)
水分の乾燥によって生じる現象なので単位水量の影響が大きいです。

自己収縮とは

セメントの水和により生じる体積減少を自己収縮といいます。
外部からの拘束や荷重、温度変化による体積変化は、自己収縮に含みません。
自己収縮は、セメント量が多いほど大きくなります

コンクリートの水密性

コンクリートの水密性を比較するための指標として
透水係数というものがあります。
透水という名のとおり、
透水係数が小さい方が水密性が高いということです。

水密性が悪くなる最大因子は、材料分離、ひび割れなどの施工欠陥です。

施工欠陥がない正常なコンクリートの場合、
水密性を確保するためには
透水係数に影響する要素は、水セメント比です。
コンクリート標準示方書(土木学会)では水セメント比55%以下
JASS5(日本建築学会)では水セメント比50%以下
とするように規定しています。
調合をより富調合とすると⇒透水係数(小)

その他、透水係数に影響する要素
粗骨材の最大寸法(大)⇒ブリーディング(大)⇒透水係数(大)
打設時に十分に締め固める⇒透水係数(小)
湿潤養生を十分行う⇒透水係数(小)
材齢が進む⇒透水係数(小)
コンクリートが乾燥する⇒透水係数(大)
フライアッシュ、高炉スラグ、シリカフュームなどの
ボゾラン反応性混和材料を適切に使うことも、
コンクリート内部が密実化し透水係数を小さくする効果があります。

コンクリートの熱的性質・耐火性

コンクリートは、建築基準法では不燃材料に指定されていたりしますが
高温に強いわけでも、火に耐えられるわけでもありません
熱が加わると弱くなり、もろくなります。
高温(200℃を超えるあたりから)を加えられると
ヤング係数も圧縮強度も低下します。
圧縮強度よりもヤング係数の低下の方が著しいです(=熱でヘニャヘニャになりやすいという意味)

コンクリートの構造体に熱が加わると
耐力が低下し、崩壊してしまう危険はなくせませんが、
耐力が低下~崩壊するまでの時間稼ぎのための対策として
鉄筋を保護する部分のかぶり厚さを大きくする。
かぶりコンクリートの剥落防止にエキスパンドメタルを用いる。
耐火性能の高い骨材を用いる(花崗岩・大理石・石灰岩:570~600℃に対し、安山岩・凝灰岩・砂岩は1000℃)
コンクリート表面をせっこうプラスターなどの材料で保護する。
高強度コンクリートなどの緻密なコンクリートは
爆裂防止のため、ポリプロピレンなどの繊維補強材を混入する
などの方法があります。

コンクリートの線膨張係数は、骨材の種類・単位量に大きく影響されます。
骨材の線膨張係数
石灰岩<玄武岩<花崗岩<硬質砂岩<石英岩