フレッシュコンクリート(硬化前コンクリート)の性質

概要

練混ぜ直後から、型枠に打ち込まれて凝結・硬化に至るまでの状態にあるコンクリートを
フレッシュコンクリートといいます。
生コン(=生コンクリート)と言われているものです。
フレッシュコンクリートに要求される性能は
作業に適する流動性があり、
均質で材料分離が起きにくい状態を維持していることです。

ワーカビリティ(workability)

ワーカビリティとは練混ぜられてから、運搬⇒打ち込み⇒締固め⇒仕上げ
の各工程の一連の作業に関するコンクリートの施工特性をあらわすものです。
ワーカビリティの判定の基準は、
構造物の種類・施工箇所・施工方法によりケースバイケースです。
判定自体も定量的な評価方法がないため
ワーカビリティが「良い」「悪い」「作業に適している」「作業に不適」など
相対的、かつ定性的な判定になります
また、ワーカビリティを重視しすぎると
硬化後の諸性能が低下するケース(※)が多いので、
硬化後のコンクリート性能を確保しつつ
ワーカビリティが良く、かつ経済的なコンクリートを
バランス良く設計することが非常に重要です。

(※)極端な例ですが、
ワーカビリティを良くするために単位水量を増やすと
コンクリートの圧縮強度が下がります。

ワーカビリティを左右する要因

(1)コンシステンシー(consistency)

フレッシュコンクリートの変形・流動に対する抵抗性をあらわします。
測定方法:スランプ試験、振動台式コンシステンシー試験、などです。

スランプ試験とは

底面200φ上面100φ、高さ300ミリのスランプコーンに
生コンを1層あたり25回棒で突いて3層に分けて充填します。
2~3秒かけてコーンを引き上げ、生コンの一番高い箇所が
コーンが元の高さ300ミリから、どれだけ下っているかを測定し
この数値がスランプ値です。
スランプ値はcm(センチメートル)で0.5㎝刻みで表します。

 

図_スランプ試験

 

振動台式コンシステンシー試験とは

硬練りのコンクリート(スランプ5cm以下)は
振動台式コンシステンシー試験でコンシステンシーの測定を行います。
スランプ試験は、重力によるコンクリートの変形を示し、
振動締固めのような大きな加速度を受けた場合に対する特性を反映できていません。
振動台式コンシステンシー試験はスランプ試験の欠点を補うために考案された試験です。
コーン状に形成されたフレッシュコンクリートが
振動によって振動台の上で広がりきるまでにかかる時間を測定し
秒であらわして、これを沈下度と定義します。
この沈下度を評価することによって、
硬練りのコンクリートの最適な細骨材率を求めることができます

フレッシュコンクリートのレオロジーモデル

生コンの物的特性をレオロジーモデルで仮定し、
レオロジー定数を測定する方法が研究されています。
⇒流体力学+塑性力学で表現され、
固体の特性と液体の特性を併せ持った物体として評価されます。
軟練りのコンクリートはビンガム流体として取り扱われています。
レオロジー定数:塑性粘度と降伏値
塑性粘度:数値が大きいほど流動に対する抵抗が大きい。粘性が高いほど数値が大きくなります。
⇒単位セメント量が大きいほど、水セメント比が小さいほど、数値が大きくなります。
降伏値:流動が始まるまさにその瞬間のせん断応力値。
⇒スランプが大きいと降伏値は小さくなります。

ビンガム流体とは

ある程度の力を加えられるまでは、形状を保持しているが
その力を超える強い力が加わると流動し始める流体。
例:チューブに入っているペースト状の歯磨き粉、洗顔フォームなど

コンシステンシーに影響を及ぼす要素

(1-1)単位水量

単位水量(大)⇒コンクリートの粘性(小)⇒スランプ(大)⇒分離しやすい
単位水量(小)⇒コンクリートの粘性(大)⇒スランプ(小)⇒分離しにくい
ただし、単位水量の極端に少ないコンクリートの場合も
粘性が不足し分離が起きやすくなります。

コンクリート1(\(m^3\))あたりに含まれている練り混ぜ水の質量(kg)のことを単位水量といいます。

(1-2)単位セメント量

単位セメント量(大)⇒コンクリートの粘性(大)⇒スランプ(小)⇒分離しにくい
単位セメント量(小)⇒コンクリートの粘性(小)⇒スランプ(大)⇒分離しやすい

コンクリート1(\(m^3\))あたりに含まれているセメントの質量(kg)のことを単位セメント量といいます。

(1-3)水セメント比

水セメント比(大)⇒コンクリートの粘性(小)⇒スランプ(大)⇒分離しやすい
水セメント比(小)⇒コンクリートの粘性(大)⇒スランプ(小)⇒分離しにくい

コンクリート1(\(m^3\))あたりに含まれている
セメント(C)に対する練り混ぜ水(W)の質量比のことを水セメント比といいます。

 
W/Cと表現されたりもします。
水の質量をセメントの質量で除した値です。

セメントの水和反応が完全に行われるために必要な水セメント比は22~27%程度と言われています。
(標準的なコンクリートの水セメント比は40~65%)
練混ぜ水は、ワーカビリティの改善のために水和反応に必要な水量以上の水が使用されています。

(1-4)粗骨材最大寸法

粗骨材最大寸法を大きくすると
同じスランプを得るために必要な単位水量と単位セメント量を減らすことができます
粗骨材最大寸法(大)⇒コンクリートの粘性(小)⇒スランプ(大)⇒分離しやすい
粗骨材最大寸法(小)⇒コンクリートの粘性(大)⇒スランプ(小)⇒分離しにくい

【関連記事】<粗骨材最大寸法とは

(1-5)骨材の粒形判定実積率

骨材の粒形判定実積率(大)⇒所定のスランプを得るのに必要な単位水量(小)
骨材の粒形判定実積率(小)⇒所定のスランプを得るのに必要な単位水量(大)
粒形判定実積率(大):骨材の形状が丸みを帯びている(例:川砂利・川砂)
粒形判定実積率(小):角張ったり偏平な形状(例:砕石・砕砂)

【関連記事】<骨材の粒形判定実積率とは

(1-6)細骨材の粗粒率

細骨材の粗粒率(大)⇒コンクリートの粘性(小)⇒スランプ(大)⇒分離しやすい
細骨材の粗粒率(小)⇒コンクリートの粘性(大)⇒スランプ(小)⇒分離しにくい

【関連記事】<細骨材の粗粒率とは

(1-7)細骨材率

細骨材率(大)⇒コンクリートの粘性(大)⇒スランプ(小)⇒分離しにくい
細骨材率(小)⇒コンクリートの粘性(小)⇒スランプ(大)⇒分離しやすい
全骨材(細骨材+粗骨材)に対する細骨材の容積比のことです。

【関連記事】<細骨材率とは

(1-8)空気量

空気量(大)⇒スランプ(大)⇒分離しやすい
空気量(小)⇒スランプ(小)⇒分離しにくい
空気量を増すことで所定のスランプを得るための単位水量を減らすことができます

(1-9)コンクリート温度

コンクリート温度(高)⇒コンクリートの粘性(大)⇒スランプ(小)⇒分離しにくい
コンクリート温度(低)⇒コンクリートの粘性(小)⇒スランプ(大)⇒分離しやすい

(2)プラスティシティ(plasticity)

プラスティシティとは、直訳すると可塑性・柔軟性などの意味ですが
フレッシュコンクリートでいうと、材料分離に対する抵抗性のことをいいます。

ワーカビリティと同様に、プラスティシティも定量的に評価・判断する方法は確立されていませ

材料分離とは

練混ぜられてから、運搬⇒打ち込み⇒締固め⇒仕上げの各工程の一連の作業中に、
フレッシュコンクリートの構成材料の分布が不均質になる現象をいいます。

粗骨材の分離

粗骨材が局所的に集中して空隙だらけになってしまうこと
豆板(もしくは、ジャンカまたは、)といいます。

施工が原因により生じる分離

高所から自由落下の距離が長くなるような打設
斜めシュートからの直接打設
落下時に鉄筋に衝突するような打設
長いシュートから排出された先での打設
上記のような打設は材料分離が生じやすくなります。
また、打ち込んだ先でコンクリートを横流しするような行為
分離が生じやすくなります。

練り混ぜ水の分離(ブリーディング)

打設後、コンクリート中の骨材・セメントが沈降し、
コンクリート中の水分が相対的に上昇します。
この水分が上がってくることをブリーディングといいます。
=練り混ぜ水の分離
ブリーディングによってコンクリートの天端面は若干下がります
これを沈下といいます。

レイタンスとは

ブリーディングによって浮上した微粒物
コンクリートの表面に沈積した強度も付着力も弱小な不純物です。
レイタンスが残ったままコンクリートを打継ぐとコンクリートの欠陥になるので、
必ず全て除去する必要があります。

(3)ポンパビリティ(pumpability)

圧送性のことをいいます。
圧送性とは、コンクリートをコンクリートポンプで圧送するための
コンクリート自体の性能のことです。

圧送性を構成する要素

・管壁でコンクリートか滑動するための流動性
・管壁のコンクリートが形状変化できる変形性
・圧力の時間的、位置的変動に耐える材料分離抵抗性
の3つから構成されています。

例えば、コンクリートの粘性は
高いと送り出す圧力の負荷が大きくなり
低いと材料分離して配管の閉塞が生じるため
ポンパビリティには適度が粘性が求められます。