概要
気温が高く、スランプの低下や水分の急激な蒸発のおそれがある時期
具体的には、日平均気温が25℃を超えるときに施工されるコンクリートを
暑中コンクリートといいます。
暑中コンクリートの注意点
コンクリートの温度が高いと、セメントの水和反応が急速に進みます。
これによってコンクリートの凝結が早くなり、
運搬中に水分が蒸発することも加わって
スランプの低下が大きくなります。
コンクリート温度が高いと、
同一スランプを得るのに必要な単位水量が多くなる傾向になります。
打ち重ね部にコールドジョイントができやすくなります。
急激な水分の蒸発によってプラスティック収縮ひび割れが生じやすくなります。
【関連記事】<打ち重ねとは・コールドジョイントとは>
暑中コンクリートの材料
セメント
セメント温度を8℃低くすると
練上がりコンクリートの温度が約1℃下げることができます。
セメントサイロで保管中は、直射日光などで
セメントの温度が上がるのを避けるように保管します。
打ち込み後の水和熱を小さくする目的で
中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント
混合セメントなどを用いることも効果的です。
骨材
温度の低い骨材を使用するようにします。
骨材の温度を2℃低くすると
練上がりコンクリートの温度は約1℃下げることができます。
骨材に直射日光が当たらないように屋根を設けたり、
冷水の散布や液体窒素で冷却する方法もあります。
冷水を散布する場合は、
骨材の含水率の管理に注意が必要です。
練混ぜ水
練混ぜ水は、なるべく温度の低いものを使用します。
練混ぜ水の温度を4℃低くすると
練上がりコンクリートの温度は約1℃下げることができます。
水のタンクや輸送管に、直射日光が当たらないように
断熱材や覆いなどを使って温度上昇を防ぎます。
フレークアイスを混ぜて冷却する方法もあります。
直接氷を練混ぜ水に投入するのはNGです。
(すぐに溶けるフレーク状の氷ならOK)
混和剤
AE減水剤遅延形、減水剤遅延形を用いることで
・コンクリートの単位水量の増加
・スランプの低下
・過度の急速な凝結
・プラスティック収縮ひび割れ
などの現象に対する改善・緩和が期待できます。
高性能AE減水剤は、
単位水量、単位セメント量を低減でき、
スランプの保持性に優れているので
暑中コンクリートに効果的です。
暑中コンクリートの調合計画
暑中コンクリートは、単位水量、単位セメント量が多くなる傾向があります。
試験練りで所要の強度とワーカビリティが得られる範囲で
できるだけ少なく定めます。
単位水量を少なくするために、スランプは18cm以下に設定します。
温度が高いと空気が連行されにくいので、
AE剤の使用は多めに計画します。
暑中コンクリートの温度
JASS5では、荷卸し時のコンクリート温度を35℃以下、
コンクリート標準示方書では、打ち込み時のコンクリート温度を35℃以下、
とするように規定されています。
練り混ぜ直後は、時間がたてばたつほど
コンクリートの温度が上昇するので、
打設時に35℃以下と規定している土木の方が
若干厳しい規定です。
コンクリートの打ち込み温度が高くなると、
凝結が早くなるため、
コールドジョイントや収縮ひび割れが生じやすくなります。
荷卸し前のトラックアジテータ中のコンクリートに
液体窒素を吹き付けてコンクリートを冷却させることも有効です。
運搬中のスランプの低下
暑中コンクリートは、運搬によるスランプの低下が大きくなる傾向があります。
練り混ぜ後、凝結がすぐに始まってしまい、
コンクリートの粘性が高くなってしまうためです。
スランプが低下すると、ワーカビリティが下がり
結果として、コンクリートの品質に影響を及ぼします。
対策としては、打ち込み場所とプラントとの間で
連絡を密に行い、運搬時間と待機時間を極力短くすることが効果的です。
また、遅延形の添加剤の使用も効果的です。
暑中コンクリートの打ち込み時間
暑中コンクリートの練り混ぜから打込み完了までの時間が規定されています。
JASS5:90分以内
コンクリート標準示方書:1.5時間以内
土木は、「時間」
内容は同一です。
JIS A 5308の規定は、
「練り混ぜ開始から荷卸しまで」の時間なので、
意味の違いに注意してください。
【関連記事】<フレッシュコンクリートの運搬時間の限度>
暑中コンクリートの養生
暑中コンクリートの養生は
打込み直後から表面を保護し、水分の急激な発散を防ぎ、
湿潤状態を保つように養生します。
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