梁の応力図(断面力)ってなに?

応力とは

部材に外力が作用したとき、部材の中に生じる力を応力(断面力)といいます。

応力には、曲げモーメントせん断力軸方向力の3種類があります。

この3種類の力が、梁にどのように作用しているかをM図(曲げモーメント図)

・Q図(せん断力図)・N図(軸方向力図)で表します。

求めた応力(曲げモーメント・せん断力・軸方向力)は、部材の断面寸法を設計するときに利用されます。

曲げモーメントとは

梁の断面をねじ込もうとする力を曲げモーメントといいます

下側に凸な曲げモーメント=正の(+)曲げモーメント

上側に凸な曲げモーメント=負の(-)曲げモーメントといいます。

 

曲げモーメント図(M図)

正の曲げモーメントは基線の下に、負の曲げモーメントは基線の上に描きます。

(=梁が伸びる側(引張側)に描きます)

 

 
駆け出し研修生
「曲げモーメント」と「モーメント」って似ているコトバですね。
 
「曲げモーメント」と「モーメント」は全く別のものです。
「曲げモーメント」
:外力によって部材を曲げようとするモーメントのことです。
「モーメント」
:任意の点を回転させようとする回転力のことです。

せん断力とは

梁の断面をすり切ろうとする力をせん断力といいます。

  

せん断力図(Q図)

正のせん断力を基線の上に、負のせん断力を基線の下に描きます。

 

軸方向力とは

軸方向に作用する力を軸方向力(軸力)といいます。

引張力を正(+)、圧縮力を負(-)で表します。

 

軸方向力図(N図)

正の軸方向力(=引張力)を基線の上に、負の軸方向力(圧縮力)を基線の下に描きます。

 

単純梁に集中荷重が作用した場合の応力図

<例題>下記に示す単純梁の応力図を具体的に求めていきます。

 

まず、ファーストステップは反力を求めます。

 

図_単純梁に集中荷重が作用したときの反力

 

【関連記事】<単純梁の反力の算出

 
駆け出し研修生
単純梁+集中荷重の組合せのこの画像、
このサイトでだいぶ使いまわされていますね。
 
同じ例題を繰り返し反復していくことで
熟練度があがっていくことを皆さん経験的にご存じのはずです。
例えば、野球の素振りなどは、まさにそれですね。

まず、M図から求めていきましょう。\(x\)をA→B間で動く変数として

A→C間、C→D間、D→B間のそれぞれの区間で、

梁に作用する曲げモーメントを出していきます。

(1)A→C間(\(0\le x\le2\))

   \(M=2.98\times{x}\) より

   \(M_A=2.98\times{0}=0\)

   \(M_C=2.98\times{2}=5.96kN\cdot{m}\)

(2)C→D間(\(2\le x\le6\))

   \(M=2.98\times{x}-2\times(x-2)\) より

   \(M_D=2.98\times{6}-2\times(6-2)=9.88kN\cdot{m}\)

(3)D→B間(\(6\le x\le10\))

   \(M=2.98\times{x}-2\times(x-2)-3.46\times(x-6)\) より

   \(M_B=2.98\times{10}-2\times(10-2)-3.46\times(10-6)=0.04kN\cdot{m}\)

   (※ゼロとみなします。∵三角関数を小数に丸めた際に生じた誤差のため)

(1)(2)(3)より単純梁のM図は下記のようになります。

 

図_単純梁に集中荷重が作用したときのモーメント図

 

続いて、Q図を描きます。作用荷重・反力の値を落とし込んでいきながら、各点のせん断力を求めていきます。

(1)A点のせん断力

   \(Q_A=V_A=2.98kN\)

(2)C点のせん断力

   \(Q_C=Q_A-V_C=2.98-2.00=0.98kN\)

(3)D点のせん断力

   \(Q_D=Q_D-V_D=0.98-3.36=-2.48kN\)

以上より、単純梁のQ図は下記のようになります。

 

図_単純梁に集中荷重が作用したときのせん断力図

 

最後にN図を描きます。

N図は、引張(プラス)か圧縮(マイナス)かが非常に重要なので、注意しましょう。

(1)A→C間

   \(N_A=2.00kN\)(圧縮)

(2)C→D間

   \(N_C=2.00kN\)(圧縮)

(3)D→B間

   \(N_B=0\)

以上より、単純梁のN図は下記のようになります。

 

図_単純梁に集中荷重が作用したときの軸方向力図

 

片持ち梁に集中荷重が作用したときの応力図

<例題>下記に示す片持ち梁の応力図を具体的に求めていきます。

 

 

まず、ファーストステップは単純梁のときと同様で、反力を求めます。

 

 

単純梁と同様に、M図から求めていきましょう。\(x\)をA→B間で動く変数として

A→C間、C→D間、D→B間のそれぞれの区間で、

梁に作用する曲げモーメントを出していきます。

(1)A→C間(\(0\le x\le2\))

   \(M=0\times{x}\) より

   \(M_A=0\times{0}=0\)

   \(M_C=0\times{2}=0\)

(2)C→D間(\(2\le x\le6\))

   \(M=0\times{x}-2\times(x-2)\) より

   \(M_D=0\times{6}-2\times(6-2)=-8.00kN\cdot{m}\)

(3)D→B間(\(6\le x\le10\))

   \(M=0\times{x}-2\times(x-2)-2\times(x-6)\) より 

   \(M_B=0\times{10}-2\times(10-2)-2\times(10-6)=-24.00kN\cdot{m}\)

(1)(2)(3)より片持ち梁のM図は下記のようになります。

 

図_片持ち梁に集中荷重が作用したときのモーメント図

 

続いて、Q図を描きます。作用荷重を単純に落とし込んでいく作業です。

(1)A点のせん断力(=0)

(2)C点のせん断力

   \(Q_A=P1=-2.00kN\)

(3)D点のせん断力

   \(Q_C=P1+P2_y=-2.00-2.00=-4.00kN\)

以上より、片持ち梁のQ図は下記のようになります。

 

図_片持ち梁に集中荷重が作用したときのせん断力図

 

最後はN図を描きます。

単純梁のときと同様に、引張がプラス・圧縮がマイナスで表現します。

(1)A→C間

   \(N=0\)

(2)C→D間

   \(N=0\)

(3)D→B間

   \(N_D=3.46kN\)(圧縮)

以上より、片持ち梁のN図は下記のようになります。

 

図_片持ち梁に集中荷重が作用したときの軸方向力図

 

 
「軸方向力」は「軸力」と略されることがあります。