JASS5(2022年改訂)

 
2021年1月時点の情報で記事を執筆しています。
2023年1月リライトしました。

JASS5とは

日本建築学会が発行している建築工事標準仕様書・同解説のうち

「鉄筋コンクリート工事」に関して記載されまとめられています。

ジャスファイブと読みます(ジャスゴというひともいるみたいです)。

建築現場のコンクリートは、ほぼJASS5に則って打設されていると言っていいと思います。

そのくらい、コンクリートについての大切な仕様が記載されています。

前回のJASS5の大幅改定は2009年でした。

2022年改定のメインテーマは「環境配慮」

・資源循環性

・低炭素性

・環境安全性

の三つについて環境性として設定されました。

非腐食環境下で使われるコンクリートについて

耐久設計基準強度を設定しなくて良いことになります。

特殊コンクリートとして「低収縮コンクリート」が設定されます。

資源循環性について

・高炉セメント・フライアッシュセメントなどの混合セメント

・再生骨材・各種スラグ骨材

・回収水

の使用割合によって資源循環等級0~資源循環等級3の4水準にランク分けして評価することになりました。

低炭素性について

使用するセメントの種別によって、低炭素等級0~低炭素等級3の4水準にランク分けして評価することになりました。

環境安全性について

評価方法は未定です(2021年1月時点)

環境安全性は、建築物の供用期間において、有害物質が有害量溶出しないものと記載されました。
つまり、コンクリートの環境安全性は、環境安全品質で評価することとされ、
具体的には、JISもしくはJASSに規定されているものを用い、
規定値を満足していることを確認すること、となっています。

非腐食環境ってなに?

近年の調査と研究で、水分が作用しない環境では

鉄筋の腐食が起きないことが明らかになっていることから

水分が作用しない環境のことを「非腐食環境」として定義されます。

具体的には、室内の床や壁が該当します。

この非腐食環境のコンクリートには

耐久設計基準強度を設定しなくてよくなります。

耐久設計基準強度ってなに?

構造体コンクリートの供用期間の級ごとに要求される

耐久性上必要な圧縮強度のことです。

短期:\(18N/mm^2\)

標準:\(24N/mm^2\)

長期:\(30N/mm^2\)

超長期:\(36N/mm^2\)

【関連記事】<コンクリートの供用期間の級

高強度コンクリート(JASS5)

高強度コンクリートの定義が、

「設計基準強度が\(36N/mm^2\)を超えるコンクリート」から

「設計基準強度が\(48N/mm^2\)を超えるコンクリート」に変更になります。

設計基準強度が\(48N/mm^2\)までは、一般的なコンクリートという扱いになります。

JIS(A5308)では\(45N/mm^2\)まで一般的なコンクリートとして扱われているので

現状に即した変更です。

新たにコンクリートの混和材料の追加・使用要件の緩和

コンクリート収縮低減剤(JISA6211)

火山ガラス微粉末(JISA6209)

コンクリート砕石粉(JISA5041)

炭酸ガス化スラグ骨材(JISA5011-5)

の使用が可能となりました。

回収水のうち上澄水は高強度コンクリートに使えるようになり、

また、スラッジ水は計画共用期間が「超長期」以外のものに使えるようになりました。

(高強度コンクリートにスラッジ水は使用不可となっています)

環境負荷の低減について

生コンクリートのリデュース=残コンの削減

JASS5(2021年)では、残コンの削減について

残コンクリートの発生を抑制することが明記されます

生コンクリートのリカバー

スランプを回復する混和剤の添加を認められるようになります。

環境負荷の低減について
「残コンの発生を抑制すること」
「スランプを回復する混和剤の添加を認めること」
についての記載はされていません。

低収縮コンクリートについて

コンクリートの乾燥収縮の低減を目的として新たに規定され、
目標とする乾燥収縮率(収縮ひずみ)によって

・低収縮等級1:\(650×10^{-6}\)

・低収縮等級2:\(500×10^{-6}\)

・低収縮等級3:\(400×10^{-6}\)

の3水準の低収縮コンクリートが設定されました。

①石灰石骨材の使用
②膨張材の使用
③収縮低減剤の使用
④化学混和剤(収縮低減タイプ)の使用

低収縮等級3(\(400×10^{-6}\))は材料の厳選が必要ですが、

低収縮等級1・低収縮等級2(\(650×10^{-6}\)、\(500×10^{-6}\))は、

これらの組合せで目標とする乾燥収縮率に対応できる見通しになりそうです。

「何もできずにひび割れを容認する時代は終わる」と語る関係者もいるそうです。

その他の変更点

寒中コンクリート

コンクリート打ち込み後91日までの積算温度M\(_{91}\)が840°D・Dを下回る期間について、

温度時間関数(積算温度)により構造体強度補正値mSnを決定することとなりました。

暑中コンクリート

「酷暑期」が設定されました。

日平均気温の日別平滑値が28度を超える期間
⇒コンクリート温度が35度を超えることが予想される期間も含まれます。

この酷暑期は、生コンの製造のみならず、

運搬・養生まで施工者にも十分に対策を取るように求められます。

シリカセメントの削除

流通されていないシリカセメントの名前を削除し、

ポルトランドセメント、高炉セメント、フライアッシュセメントの3種類としました。

軽量コンクリートについて

設計基準強度が\(27N/mm^2\)を超える軽量コンクリートに使用するセメントについて、

混合セメントの場合は原則としてA種に限定していましたが、

B種・B種相当まで使用できることになりました。

国内に流通している高炉セメントが高炉セメントB種であることなどが理由です。

高流動コンクリートについて

高流動コンクリートについては現在も指針の改訂作業中です(2021年1月時点)

自己充填性を備えていなくても、軽微な振動・締固めにより充填することができるものについても

高流動コンクリートの適用範囲としています。

また、コンクリートの受け入れ後に混和剤を添加して高流動化させるコンクリートは

流動化コンクリートの規定を適用します。

まとめ

JASS5は2022年11月に改訂されました。

メインテーマは「環境配慮」です。

資源循環性、低炭素性、環境安全性について、新たに等級が設定されました。

低収縮コンクリートの新たな設定も加わり、また種々のコンクリートにも

現状に即した変更点が加えられました。