流動化コンクリートと高流動コンクリート

概要

流動化コンクリートとは、
あらかじめ練り混ぜられたコンクリート(=ベースコンクリート)に
流動化剤を添加し、流動性を大きくしたコンクリートを指します。
高流動コンクリートは、
振動締固めをしなくても、材料分離を生じることなく
配筋されてある型枠の隅々まで自己充填する流動性を有するコンクリートを指します。
材料の分離抵抗性を損なわず、流動性を非常に高めたコンクリートです。
流動性を示す指標は、スランプではなくスランプフローを用います。

【関連記事】<スランプフローとは

流動化コンクリートと高流動コンクリート
名前は似ていますが、用途が異なります。

流動化コンクリートの性質

流動化剤を添加する目的は、単位水量・単位セメント量を変えずに
スランプを大きくし、コンクリートのワーカビリティを改善するためです。
流動化剤は、荷卸し直前に添加・撹拌されます

流動化前のベースコンクリートのスランプは8~12cm程度が一般的です。
流動化剤添加後のスランプ増大量は、5~8cm程度とします(Max:10cm以下)。

流動化コンクリートの細骨材率は、
流動化後のスランプ(=軟練りの)コンクリートと
同等の細骨材率で調合設計を行います。
ベースコンクリートのスランプのままでの細骨材率では、
求められる流動性に対して、細骨材が少なく分離が生じやすい傾向があるためです。

流動化コンクリートは、流動化後のスランプの経時変化が大きくなります
流動化後、スランプが小さくなりやすい。ということです。
例:スランプ12cmのベースコンクリートに流動化剤を添加して
スランプ20cmを得た後、外気温にも影響をうけますが、
45分程度経過すると、スランプは8cm程度にまで下がることもあります。

そのため、流動化コンクリートは、
流動化後、外気温が25℃未満では30分以内
外気温25℃以上では20分以内打設完了することが望ましいとされています。

流動化コンクリートは、同じスランプの軟練りコンクリートに比べると
ブリーディング量は少なくなります。相対的に単位水量が少ないためです。
乾燥収縮も、同様に流動化コンクリートの方が
同じスランプの軟練りコンクリートよりも少なくなります。

高流動コンクリートの性質

高流動コンクリートが開発された目的は
打設作業の合理化や、配筋量が多いコンクリートに対する充填性の改善のためです。

高流動コンクリートは、高性能AE減水剤(もしくは高性能減水剤)が添加されます。
また、材料の分離抵抗性を付与する方法が、以下の3種類あります。
・粉体量を増加させ水粉体量比を小さくして分離抵抗性能を高める=粉体系
・増粘剤を加えることによって、セメントペーストの分離抵抗性を高める=増粘剤系
・粉体量を増加し、さらに増粘剤を加える=併用系

高流動コンクリートは、凝結時間が長くなる傾向にあります。
また、ブリーディングは一般のコンクリートに比べて少ない傾向にあります。

強度・耐久性の特性は、高強度コンクリートに近いものとなります。
水セメント比(水結合材比)が小さめに設定されるためです。

高流動コンクリートの材料

セメントは、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント
高炉セメント、およびフライアッシュセメントなど
低発熱型の高ビーライト系のセメントが用いられることが多いです。

高流動コンクリートは、粉体量を多くするため
比較的多めの混和材が使用されます。

混和剤は、高性能AE減水剤がほぼ必ず用いられます

骨材は、自己充填性を向上させるために
実積率の高い骨材の使用が推奨されています

高流動コンクリートの製造

高流動コンクリートは、一般のコンクリートよりも
粘性が高いので、練混ぜ性能の高いミキサを選定します。
コンクリート標準示方書(土木学会)では、
重力式ミキサではなく、強制練りミキサの使用が指定されています
同じ容量なら、重力式よりも強制練りのミキサの方が
練混ぜ性能が高いためです。

1回あたりの練混ぜは、ミキサの最大容量の~90%までとし、
練混ぜ時間は、90秒以上とすることを原則としています。

骨材の表面水率の変動が粘性に及ぼす影響が大きいので
細骨材の表面水率は5%以下、
粗骨材の表面水率は1%以下
となるように管理することが望ましいとされています。

【関連記事】<骨材の表面水率とは

高流動コンクリートの施工

高流動コンクリートは粘性が高いので、
圧送時の圧力損失は、一般のコンクリートよりも大きくなります。
圧送管の径を大きくしたり、
適切なポンプ車の選定(スクイーズ式よりもピストン式の方が圧送能力が高い)
検討・確認が重要です。

高流動コンクリートは自己充填性が高いコンクリートですが
片押しで自由流動させて良い限度の距離が規定されています。
JASS5(日本建築学会)の規定では、20m
コンクリート標準示方書(土木学会)では、15m
広く平面的に打設する場合は、8m
また最大自由落下高さは、5m以下を標準とします。

高流動コンクリートの型枠を設計・検討する時は、
流動性が高く、凝結にも時間がかかり
打設後も長時間にわたり側圧が減少しにくい特性があるため、
型枠の側圧は液圧として検討します。