コンクリートの劣化

概要

コンクリートの劣化現象には
塩害、中性化、アルカリシリカ反応、化学的浸食などの化学的な劣化
凍害、すり減りなどの物理的な劣化があります。

塩害

コンクリート中の塩化物イオンにより、鋼材(鉄筋やPC鋼材)が腐食し、
コンクリート構造物にひび割れ、剥離・剥落などの損傷が生じ機能が低下する現象
塩害といいます。

塩害の原因

コンクリート中に、
(1)塩化物イオンが一定量以上存在
(2)酸素
(3)
が加わると、鋼材に腐食が起こります。
コンクリートに塩化物イオンが侵入する原因として
最初からコンクリートに含まれていた(内在塩化物イオン)と
海水飛沫や飛来塩化物、などの塩化物がコンクリート表面から浸透する
(外来塩化物イオン)場合があります。

塩化物イオンに酸素と水が加わると錆が生じます。
錆が発生する時に体積が2~3倍に膨張するので、
膨張圧でコンクリートにひび割れが生じます。
このひび割れから、(塩化物イオンと)酸素と水が更に供給されます。
上記のサイクルは、スパイラルループになり、
錆はぐんぐん成長し、コンクリートがみるみる劣化します。

塩害の予防対策

腐食の原因物質を減らすことが重要です。
⇒コンクリートとその周辺の酸素と水を減らすことはあまり現実的ではないので、
コンクリート内の塩化物イオンを減らすことが最優先事項になります。
コンクリート内の塩化物イオンの総量を0.30kg/m3までに抑える

コンクリート内への腐食原因物質の侵入・浸透を抑制する。
⇒クラックを適正に補修する。

鋼材表面への腐食原因物質の到達を抑制する。
⇒鉄筋を防錆処理する。
エポキシ樹脂系の塗装で防錆処理をする事例が
特に土木案件(港湾や河川)で増えたと感じます。
ただエポキシ樹脂塗装鉄筋は、コンクリートの付着力の低下や
配筋時の塗膜の剥がれのタッチアップなど=コストとのバランス
クリアすべき課題があるようです。

中性化

空気中の二酸化炭素の作用により
とコンクリート内の水酸化カルシウムが炭酸カルシウムになり
アルカリ性が失われる現象を中性化といいます

中性化の原因

二酸化炭素が原因なので、
人の呼吸や、燃料の燃焼など。
コンクリートの中性化により、
錆が発生しやすくなる(酸化が生じやすくなる)ことが問題です。
錆発生=体積膨張ひび割れ酸素と水の更なる供給錆追加発生
のスパイラルループにより、中性化がコンクリートの劣化の引き金になります。

環境条件としては、
二酸化炭素濃度が(高)⇒中性化(早)
周辺の湿度(低)⇒中性化(早)
周辺の温度(高)⇒中性化(早)

 
中性化の進行は、時間の平方根に比例します。
〇×問題「中性化深さは、経過年数にほぼ比例する」
は誤りになります(正答⇒×)。

中性化の予防対策

中性化の進行は表面から内部に向かって進行するので
鉄筋のかぶり厚さを大きくすることは、
中性化による塩害を防止する上で有効です。

中性化の確認は、フェノールフタレイン1%溶液で確認します。
アルカリ性が残っていれば、赤紫色に反応し
中性化が進んでいたら、無色のままです。

アルカリシリカ反応(Alkaline Silica Reaction)

骨材のアルカリシリカ反応とは

コンクリートの細孔溶液中の水酸化アルカリ(KOH、NaOH)
骨材中のアルカリ反応性鉱物との化学反応です。
この反応生成物(アルカリシリカゲル)の吸水膨張作用によって、
コンクリートにひび割れが発生します。
アルカリ骨材反応と呼ばれていた時期もありました。
ひび割れの入りかたは、
拘束の小さい無筋コンクリートの場合は亀甲状に
鉄筋コンクリート構造物の場合は主筋方向にひび割れが発生します。

アルカリシリカ反応の原因

アルカリシリカ反応による有害な膨張は
(1)反応性鉱物を含む骨材が、ある量以上に存在すること。
(2)細孔溶液中に十分な水酸化アルカリが存在すること。
(3)コンクリートが多湿or湿潤状態にあること。
上記(1)~(3)が同時に成立して初めて起こります。

ペシマム量(ペシマム混合率)とは

コンクリートに含まれる反応性骨材の量が多ければ多いほど
アルカリシリカ反応による膨張が大きくなるわけではありません。
アルカリシリカ反応による膨張が最も大きくなるときの
骨材に含まれている反応性骨材の割合をペシマム量といいます。
反応性骨材をペシマム量以下にコントロールすること
アルカリシリカ反応の抑制につながります。

骨材の反応性試験方法

JIS A 1145(化学法)

粉砕した骨材を80℃のアルカリ溶液で反応させて
その溶液の濃度減少量Rcと、溶解シリカ量Scから
骨材の潜在的反応性を化学的に判定する方法です。
Sc≧10 mmol/L かつ
Rc≦700 mmol/L のとき
Rc≦Sc を「無害でない」⇒NG とし、
それ以外を「無害」⇒OK とします。

 
わたしが初めて学んだときは「無害でない」
ではなく「有害である」って表現でした

JIS A 1146(モルタルバー法)

粒度調整を行った試料を用いて水セメント比50%、
セメントのアルカリ量を1.2%に調整したモルタルで
40×40×160mmのモルタルバーを作成し、
温度40±2℃、相対湿度95%以上の条件下で6か月保存したときの
モルタルの長さ変化を測定することで、
骨材の潜在的反応性を判定する方法です。
膨張量が0.1%以上の場合を「無害でない」⇒NG とし、
それ以外を「無害」⇒OK とします。

 
コメント化学法は、24時間で判定結果がでます。
モルタルバー法は、6か月かかります。

2種類以上の骨材を混合して使用する場合、
それぞれの骨材のアルカリしか反応性の試験をして
「無害でない」と結果が一つでもでた場合は、
混合した骨材全体が「無害でない」骨材として扱います。

 
駆け出し研修生
クロとシロを混ぜて、グレーになっても
クロが混ざっているから、クロ。ということですね

アルカリシリカ反応の予防対策

上記、アルカリシリカ反応の原因である
(3)はコントロールが難しいので
アルカリシリカ反応により有害な膨張が起きるのを予防する方法は、
(1)(2)を抑えることに重点が置かれています

化学法またはモルタルバー法で無害と判定された骨材を使用する

コンクリート中のアルカリ総量を規制する⇒アルカリ総量 3.0kg/m3以下になることを確認する

化学的浸食

外部環境から供給される化学物質とコンクリートが化学反応を起こして起こす劣化現象
(1)コンクリート中のセメント水和物と化学反応を起こし、
水に溶けにくいセメント水和物⇒可溶性物質に変質させることにより
コンクリート組織が多孔質化したり、分解したりする劣化現象
(2)コンクリート中のセメント水和物と反応して
あらたに膨張性化合物を生成し、生成時の膨張圧により
コンクリートを破壊・劣化させる現象
(3)コンクリートが長期間にわたって水に接することにより、
コンクリート中のセメント水和物の成分が外部に溶脱して
硬化体組織が多孔化する劣化現象

化学的浸食の原因

硫酸、塩酸などの強い酸は、セメント水和物を分解して
コンクリートを化学的に破壊します
コンクリートはアルカリ性なので、酸性に対する耐性は低いです。

硫酸塩は、コンクリート中の水酸化カルシウム、アルミン酸三カルシウムと反応して
エトリンガイトを生成します。
このエトリンガイトは生成されるときに大きな膨張を伴うので
コンクリートを破壊します。

コンクリートは海水によって劣化します。
海水には、硫酸マグネシウム(=マグネシウムの硫酸塩)や
塩化マグネシウム(=コンクリート中の石灰と反応してコンクリートを水溶性にします)
が含まれているため。

ショ糖、果糖、砂糖などの糖類は、コンクリート中の水酸化カルシウムと反応して
可溶性の糖酸カルシウムを生成し、溶出によりコンクリートを多孔質化して劣化させます
また、硬化前に糖類が加えられると硬化不良を起こします

溶脱とは

コンクリート中のカルシウム成分が、地下水、雨水、海水など
周囲の水に溶解することによって水和組織が多孔質化する現象溶脱といいます。
溶脱によってコンクリートが著しく強度が落ちることは少ないとされています。

エフロレッセンスとは

セメント硬化体中の可溶性成分(カルシウムイオン・アルカリ金属イオン・硫酸イオン)を溶解した水が
表面ににじみ出し、水分の蒸発によって溶存成分が表面に析出したものをエフロレッセンスといいます。
硬化が不十分なとき
水セメント比が大きいコンクリート
工不良などにより、透水しやすい部分
に生じやすいです。

化学的浸食の予防対策

化学的浸食に対しては、構造物の設計耐用年数を考慮して
設計時に十分な対策をとっておくか、定期的な補修を計画し、
新設時から何らかの対策を講じておくことが重要です。
酸や硫酸塩に対しては、コンクリート表面に被覆を施すことが効果的で、
また、鋼材を保護するには適切なかぶり厚さを確保することが大切です。
フライアッシュや高炉スラグ微粉末を混入することにより
ボゾラン活性や潜在水硬性による水密性で抵抗性を向上させることができます。

凍害

凍害の原因

コンクリートに含まれている水分が凍結すると、
水の凍結膨張(体積膨張率約9%)による膨張圧で
コンクリート組織の破壊が生じます
この破壊はセメントペースト中、骨材中、
セメントペーストと骨材の界面すべてで生じます。

凍結融解作用を受けるコンクリートは、
凍結と融解の繰り返しによって劣化します
そのため、日の当たる箇所の方が凍結融解の繰り返し回数が多くなり、
劣化の程度も大きくなる傾向があります。

海水の作用と凍結融解作用が複合すると、
劣化作用は著しく大きくなります
負のスパイラルがお互いに影響しあってさらに増大するためです。
また、凍結防止剤(=主成分塩化ナトリウム)が散布されるコンクリートは、
凍害による劣化が促進される場合ああります。

凍害によりコンクリートの塩分は、コンクリート内部に移動します。
鉄筋位置での塩分濃度が高くなると、塩害を生じるので注意が必要です。

ポップアウトとは

吸水率が高い軟石を用いたコンクリートでは
凍結時に骨材自身が膨張し表面のモルタルをはじきだして浮かします
この現象をポップアウトといいます。

凍害の予防対策

コンクリートの耐凍害性は、空気量と密接に関係しています。
微小な独立した空気泡が多く連行されているほど(=気泡間隔係数が大きいほど)、
耐凍害性が向上します
⇒AE剤、AE減水剤、高性能AE減水剤を使用して
エントレインドエアを連行するのが非常に効果的です。

【関連記事】<AE剤とは・気泡間隔係数とは

耐凍害性の高い骨材を用いることも効果があります
耐凍害性効果を判定する試験
JIS A 1122(硫酸ナトリウムによる骨材の安定性試験方法)
にて骨材の耐凍害性の判定をします。

コンクリート自体の耐凍害性を確認する試験
JIS A 1148(コンクリートの凍結融解試験方法)にて確認します。
100×100×400mmの供試体に凍結融解作用(+5~-18℃)を
人工的に300サイクル(3~4時間/1サイクル)繰り返し加え
耐久性指数の度合いは、供試体の相対動弾性係数によって評価します。

すり減り

コンクリートのすり減りは
車両などによるすり磨き作用
流水中の砂・水などによる突き砕き作用、があります。

すり減りの原因

初期は表面のモルタル部分から始まり、内部の粗い砂や骨材部分が削られます。
骨材のすり減り抵抗が影響します。

キャビテーションとは

高速の水流にさらされる水中構造物のコンクリート表面に
凹凸や屈曲した箇所がある場合、水中の圧力差により
短時間に泡の発生と消滅が生じる現象です。
キャビテーションの繰り返しにより
コンクリート表面は強い圧縮と引張の繰り返し荷重を受けることになり
損傷・劣化が進みます

すり減りの予防対策

・水セメント比の小さな調合(配合)のコンクリートを使用する(圧縮強度を大きくする)
・すり減り抵抗の高い骨材を使用する
・キャビテーションが起きにくいようにコンクリートの表面を平滑にする