海水の作用を受けるコンクリート・海洋コンクリート

概要

海水に接するコンクリート
波浪・海水飛沫・潮風の作用を受けるコンクリートを
海水の作用を受けるコンクリート、または海洋コンクリート
といいます。

海水による劣化
・塩化物イオンによる鋼材の腐食

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・海水成分の化学的作用によるコンクリートの劣化

・波浪によるコンクリートの摩耗や、
凍結融解などの物理作用によるコンクリート表面の損傷

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問題になりやすい劣化

・飛沫帯、干満帯付近での鋼材の腐食
・干満帯付近での凍結融解作用による表面剥離

海水の影響が大きい箇所(大小関係)
干満帯&飛沫帯>海上大気中>海中

 

図_海洋環境と構造物

 

・鋼材の腐食による膨張
1)海上大気中
2)飛沫帯
3)干満帯

・凍結融解作用による表面の剥離
1)海上大気中
2)飛沫帯
3)干満帯

・乾燥および湿潤の繰り返し作用
2)飛沫帯
3)干満帯

・波浪と砂れきによる摩耗
2)飛沫帯
3)干満帯

・硫酸塩による化学作用
2)飛沫帯
3)干満帯
4)海中

海水の化学作用

海水に含まれている成分のうち、
特にコンクリートに有害な塩類は、
硫酸マグネシウム(MgSO4)と
塩化マグネシウム(MgCl2)です。

硫酸マグネシウムは、
セメントの水和生成物と反応して石こうの結晶と、水酸化マグネシウムを生成します。
石こうの一部と、セメント中のアルミン酸三カルシウム(C3A)と反応して
エトリンガイトを生成します。
これらの化学反応は全て体積膨張を伴うため
コンクリートにひび割れが発生します

塩化マグネシウムは、コンクリート中の水酸化カルシウムと反応して
水溶性の塩化カルシウムを生成し、コンクリートの組織を多孔質化します
⇒これは組織をスッカスカにし、劣化のループを招きます。

これらの化学作用は、コンクリート中の鋼材の腐食を誘発・促進させる要因になります。

海水の気象作用

表層のコンクリートは、気象の変化や潮の干満によって温度や湿度が変化します。
この局所的な体積変化がひび割れの発生の原因になります

更に凍結融解作用が複合的に作用すると、劣化作用が増幅されます。

北海道、東北、北陸地方の港湾コンクリート構造物では
このような理由からひび割れやスケーリングがよく見られます。

海洋コンクリートの材料

海洋コンクリートのセメントは、
水酸化カルシウムの生成量の少ない高炉セメントか
普通ポルトランドセメントが用いられます。

アルミン酸三カルシウムの少ない中庸熱ポルトランドセメントや
低熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメントを用いて、
耐硫酸塩性能を高めても、鋼材の腐食防止の観点からは逆効果になることもあり
海洋環境の構造体コンクリートに耐硫酸塩性のセメントを用いることが
必ず有効であるとは言えません

骨材は、吸水性の高いもの、強度の小さいもの、膨張性のあるものは避けて使用します。

強度が大きく、水密性が高く、密実なコンクリートとすることが望ましいので、
水セメント比は、一般のコンクリートに比べて小さくする必要があります。
そのため、単位セメント量は多めになります。
空気量は6%以上あると良いとされています。

海洋コンクリートの施工

コンクリートの打ち継ぎ部は、弱点となりやすい(劣化が始まりやすい)ので
満潮位から上側60cmと干潮位から下側60cmの干満範囲には設けないように計画します。

コンクリートが十分に硬化しないで海水に接すると、
モルタル流出などの欠陥になってしまうので、
打設後5日間は海水に洗われないように保護するようにと規定されています。

鉄筋のかぶりを十分に確保することが、鋼材の腐食の防止に効果があり
コンクリート構造体の耐久性の向上につながるので、
スペーサーを用いて、設計かぶり寸法を確保する必要があります。