概要
コンクリート標準示方書(土木学会)
日平均気温が4℃以下になると予測されるときは、
寒中コンクリートとして施工する。
JASS5(日本建築学会)
・打ち込み日を含む旬の日平均気温が4℃以下の期間
・コンクリートを打込み後91日までの積算温度が840℃・日を下回る期間
のいずれかに施工されるコンクリートを指し
打ち込み後、養生期間中にコンクリートが凍結するおそれのある場合に
施工されるコンクリートを寒中コンクリートと定義しています。
積算温度とは
積算温度\(M_{91}\)とは、
θz:日平均温度または、コンクリート平均温度
θzに10℃を加算し、
91日間について総和したものです。
\(M_{91}=\sum\)(\(\theta{z}+10\))(℃・日)
寒中コンクリートの注意点
コンクリートは打ち込み後、初期材齢時に一度でも凍結すると
コンクリートは初期凍害を受けてしまい、
その後適切な温度で養生を行っても
強度・耐久性・水密性などにおいて
コンクリートに求められる品質が得られなくなります。
寒中コンクリートの材料
セメント
寒中コンクリートでは
初期強度発現や養生温度の面から
早強ポルトランドセメントや普通ポルトランドセメントが有利です。
ただ、中庸熱ポルトランドセメントや低熱ポルトランドセメント等
凝結・硬化が遅いセメントをを使用するときは
初期凍害を受けないように、
初期材齢における強度発現の遅延に対する養生等の対策を講じる必要があります。
セメントは、いかなる場合においても
加熱してはならないとされています。
セメントは一様な加熱が困難で、
部分的に凝結が著しく促進したり、急結するおそれがあるためです。
骨材
骨材は、凍結や氷雪の混入がないように貯蔵します。
上屋のある貯蔵施設で貯蔵するのがGood。
軽量骨材をプレウェッティングして用いる場合には
骨材内部の水の凍結防止のため
保温加温設備のある場所で貯蔵します。
骨材の加熱は認められています。
ただし、直火はNGです。
均一にまた、過度に乾燥しないように加熱します。
65℃以上の加熱は、セメントが急結するおそれがあるためNGです。
練混ぜ水
練混ぜ水は、冷えないように貯蔵し
必要に応じて加熱して用います。
水温は、セメントが急結を起こさない温度として、
水と骨材の混合物の温度は、
40℃以下とすることが推奨されています。
混和剤
寒中コンクリートは、初期凍害防止の観点から
AEコンクリートとすることが有効です。
AE剤、AE減水剤、高性能AE減水剤の使用を標準としています。
コンクリートの凝結・硬化を促進させる混和剤の使用に関しては
主成分が塩化物のものがあるため、
鉄筋の防錆上問題が生じると考えられるときは
使用しないようにします。
高性能AE減水剤を用いて水セメント比を小さくすることは、
凍結に対する抵抗性を高める目的で効果的です。
ただし、低温における減水性能、ワーカビリティの変化や
強度発現の遅れなども考慮して採用の可否を検討する必要があります。
寒中コンクリートの調合計画
単位水量は、できるだけ少なくします。
コンクリート中の凍結可能な水分量も少なくなり
初期凍害のリスクが下げられるためです。
水セメント比も、できるだけ小さくします。
水和熱が相対的に大きくなります。
強度(初期強度)が高くなります。
初期凍害の防止に必要な圧縮強度=5.0\(N/mm^2\) 以上を
初期養生期間内に得られ、
かつ設計基準強度が所定材齢内に得られるように
調合計画を定めます。
試験対策テクニック
(1)打設時のコンクリートの温度を50℃とした:NG!
(2)セメントの温度を50℃とした:NG!
(3)骨材の温度を50℃とした:OK
(4)セメント投入前のミキサ内の骨材+水の温度を50℃とした:NG!
(2)セメントはどんな理由があったも加熱すること自体がNG
(3)問題なし。スチームなどで加熱します。
(4)セメント投入前のミキサ内は、40℃以下に規定されているためNG
寒中コンクリートの製造
荷卸し時のコンクリート温度
10~20℃(JASS5)
5~20℃(コンクリート標準示方書)
JASS5(建築用)は部材厚が薄い場合や
気象条件が厳しい場合を想定し、10℃以上と規定しています。
コンクリート標準示方書(土木用)では
部材厚が厚い場合、打ち込み温度を上げると
水和発熱に起因するひび割れのリスクが大きくなるため
5℃以上と規定しています。
基準が異なっているパターンです
寒中コンクリートの打込み
寒中コンクリートは
コンクリート打設時に、鉄筋・型枠などに
氷雪が付着しないように注意する必要があります。
また、凍結した地盤上にコンクリートを打設することはNGです。
打設準備が整った地盤は、ただちに断熱材やシートで覆い
凍結しないようにする必要があります。
打ち継ぎ目の旧コンクリートが凍結している場合には、
溶かして打ち継ぐ必要があります。
【関連記事】<コンクリートの打ち継ぎ>
寒中コンクリートの養生
寒中コンクリートの養生の原則は
「コンクリートが初期凍害を受けなくなるとみなされる圧縮強度を得るまで
凍結させないように養生する」
ことで、この期間の養生を初期養生といいます。
【関連記事】<コンクリートの養生>
初期養生の温度
JASS5
打込まれたコンクリートが圧縮強度=5.0\(N/mm^2\) 以上になるまでの間、
どの部分も凍結させてはならない、とされています。
コンクリート標準示方書
打込まれたコンクリートは、所要の強度が発現するまで
5℃以上に保つ必要があります。
(部材厚が薄い場合や寒さが厳しい場合は10℃以上)
養生方法
加熱養生(給熱養生)
コンクリートまたは構造物の周囲に上屋または覆いを設けて
その内部の空気を加熱してコンクリートの冷却を防止する養生方法を
加熱養生といいます。
加熱設備の配置などは、あらかじめ加熱試験を行って定めます。
加熱養生中は、コンクリートが計画された温度に保たれ、
かつ均等に加熱されるようにし、
また加熱によってコンクリートが乾燥しないように
適度に散水を行います。
JASS5では加熱養生といい
コンクリート標準示方書では給熱養生と呼ばれています。
断熱養生(保温養生)
コンクリートの表面を断熱シート、マット、断熱材料
断熱型枠など用いて覆い、セメントの水和熱を利用する養生方法を
断熱養生といいます。
マスコンクリートで有効な方法です。
JASS5では断熱養生といい
コンクリート標準示方書では保温養生といいます。
被覆養生
コンクリートや型枠の表面をシートなどで覆い、
打込まれたコンクリートの水分の蒸発と風からの影響を防ぐ簡易な養生を
被覆養生といいます。
初期養生の打ち切り時期
JASS5
構造体コンクリートの圧縮強度=5.0\(N/mm^2\) 以上が確認されるまで。
コンクリート標準示方書
しばしば凍結融解を受ける箇所
薄い断面の場合:15\(N/mm^2\) 以上
普通の断面の場合:12\(N/mm^2\) 以上
厚い断面の場合:10\(N/mm^2\) 以上
まれに凍結融解を受ける箇所
薄い断面の場合:5\(N/mm^2\) 以上
普通の断面の場合:5\(N/mm^2\) 以上
厚い断面の場合:5\(N/mm^2\) 以上
が確認されるまで、コンクリートの温度を5℃以上に保ち、
さらにその後の2日間は0℃以上に保つ必要があります。
初期養生終了後の養生
初期養生終了後のコンクリート、特に露出面は、
シートなど適切な材料で隙間なく覆い、
コンクリートが急激に冷却されたり、
乾燥したりしないように注意する必要があります。