A.コンクリートの材料的性質に関係する要因
A1.セメントの異常凝結
幅が大きく短いひび割れが、比較的早期に不規則に発生します。
予防対策
⇒適正なセメントの使用
A2.セメントの異常膨張
放射型の亀甲状のひび割れが発生します。
予防対策
⇒適正なセメントの使用
A3.コンクリートの沈下やブリーディング
打ち込み後、数時間で鉄筋の上部や、壁と床の境界部に断続的に発生します。
予防対策
⇒単位水量を少なくして密実な調合にする。低い打ち込み高さで十分な締固めを行う。
A4.骨材に含まれている泥分
コンクリート表面の乾燥に伴い、不規則に網状のひび割れが発生します。
予防対策
⇒適切な保護、噴霧、被膜養生を行う。
A5.セメントの水和熱
断面の大きいコンクリート(マッシブなコンクリート)で打ち込み後、
1~2週間してから直線状のひび割れがほぼ等間隔に規則的に発生します。
表面だけのものと、部材を貫通するものがあります。
予防対策
⇒水和熱の低いセメントの使用により温度上昇の制御を行う。
熱膨張の正常な骨材の使用する。膨張材を使用する。
プレクーリングヤパイプクーリングなど養生計画の検討。
A6.コンクリートの効果・乾燥収縮
打ち込み後2~3ヶ月してから発生し、次第に成長していくひび割れです。
開口部や、柱・梁に囲まれた隅部は斜めに、
細長い床や壁・梁などにはほぼ等間隔に垂直にひび割れが発生します。
予防対策
⇒単位水量を少なくして密実な調合にする。 十分な養生を行う。
(現実的かどうかはまた別問題です)
A7.反応性骨材の使用
コンクリート内部から亀甲状にひび割れが発生します。多湿な箇所にも生じます。
予防対策
⇒アルカリ分の少ないセメントの使用。反応性試験結果が無害な骨材を使用。
【関連記事】<アルカリシリカ反応とは>
B.コンクリートの施工に関する要因
B1.急速なコンクリート打ち込み速度
沈下やブリーディングが生じやすくなるため、
沈下やブリーディングによるひび割れが発生します。
予防対策
⇒低い打ち込み高さで十分な締固めを行う。
B2.不均一な打ち込み・ジャンカ
材料分離はコンクリートのひび割れや劣化の原因になります。
予防対策
⇒入念な打設計画を立てて、材料分離が起きない打設方法を採用する。
打ち重ね時にも十分な締固めを行う。
B3.打ち継ぎ処理の不良
コンクリートの打ち継ぎの箇所や、
コールドジョイントからひび割れが広がります。
予防対策
⇒入念な打設計画を立てて、打ち継ぎ部のレイタンスを取り除く。
打ち重ね時にも十分な締固めを行う。
新たなコンクリートを打ち足していくことです。
「打ち継ぎ」先に打設したコンクリートが硬化した後に、
さらに新しいコンクリート打ち込むことです。
打ち継ぎは、打ち継ぎ面が弱点・欠陥になりやすいので注意が必要です。
B4.型枠のはらみ
型枠の動いた方向に平行にひび割れが発生します。
予防対策
⇒十分が剛性を持つ型枠で打設する。
型枠支保工強度計算でたわみを小さく設計する。
B5.初期養生不良による急激な乾燥
打ち込み直後、表面の各部分に短いひび割れが不規則に発生します。
プラスチックひび割れと言われています。
予防対策
⇒適切な保護、噴霧、被膜養生を行う。
B6.初期養生不良による凍結
細かいひび割れが発生します。
脱型するとコンクリートが白っぽくスケーリングします。
予防対策
⇒AE剤を適切に使用し、空気泡の連行により凍結時の膨張圧の吸収を図る。
C.コンクリートの使用・環境条件に関係する要因
C1.環境温度・湿度の変化
温度差により表面にひび割れが発生します。
目地のない大きい面積のスラブや壁に多くみられます。
予防対策
⇒適切な間隔で伸縮目地を設ける。
C2.凍結融解の繰り返し
表面がスケーリングを起こしボソボソになります。
予防対策
⇒B6と同様、AE剤を適切に使用し、空気泡の連行により凍結時の膨張圧の吸収を図る。
【関連記事】<コンクリートの凍害とは>
C3.火災・表面加熱
表面全体に細かい亀甲状のひび割れが発生します。
予防対策
⇒火災が起きないように予防する。
C4.鉄筋腐食による膨張
鉄筋に沿って大きなひび割れが発生します。
かぶりコンクリートが剥落したり、錆汁が流出したりします。
予防対策
⇒まずコンクリートの中性化の予防として、かぶり厚さを大きくする。
鉄筋が腐食しないように鉄筋を防錆処理する。
単位水量を少なくして密実な調合にする。 十分な養生を行う。
【関連記事】<コンクリートの中性化とは>
C5.酸・塩類の化学作用
コンクリート表面が浸食されたり、
膨張性物質が形成された全面にひび割れが発生します。
予防対策
⇒コンクリート表面の保護。
鉄筋が腐食しないように鉄筋を防錆処理する。
D.構造・外力などに関係する要因
D1.地震・積載荷重などのオーバーロード
曲げ荷重が作用する部材は、引張側にひび割れが発生します。
せん断荷重が作用する部材は、
せん断荷重に対して45°方向にひび割れが発生します。
予防対策
⇒構造計算による適正な配筋が必要。
D2.断面・鉄筋量の不足
上記オーバーロードと同様、ひび割れが発生します。
予防対策
⇒構造計算による適正な配筋が必要。
D3.構造物の不同沈下
不同沈下した箇所に45°方向にひび割れが発生します。
予防対策
⇒不同沈下の原因の除去。