木材構造建築物の今後の展開を勝手に考察

 
駆け出し研修生
ブログタイトルの構造力学は今回はお休みですね
 
雑記ブログは、もっとなんでもありなんですから、
多少ヨコミチに寄り道しても問題ないでしょう。

(仮称)銀座8丁目開発計画

施主:ヒューリック株式会社

設計監理:株式会社竹中工務店一級建築士事務所

外装デザイン監修:隈研吾建築都市設計事務所

施工:株式会社竹中工務店

構造:木造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造

階数:地上12階

竣工予定:2021年10月

特徴

木造で耐火建築物としているところだと思います。

構造体である柱と梁に耐火集成材(※1)を使っています。

(厳密には、木造と鉄骨造のハイブリッド構造)

 
※1 耐火集成材
竹中工務店が研究を進めている技術で
「燃エンウッド」という商標を取得しています。
また、国土交通大臣認定を受けています。
燃エンウッドの特徴から察すると
構造体の木材はあらわしで使われていると思います。

隈研吾さんの事務所は主に外装に関与している感じでしょう。

銀座8丁目という立地もキーポイントだと思います。

木造(集成材・CLT・LVL)の大規模建築はS造・RC造より建築コストが高いです。

例えば、材料単価

生コン:¥20,000/m3

集成材(105×105):¥100,000/m3

建築コストが高くても銀座という立地で、付加価値がある建物ならば

数年でペイできるとの計算だったのではないでしょうか。

逆に、銀座という一等地だから実現したプロジェクトだと思います。

ゼネコン各社の耐火木造技術

燃エンウッド

株式会社竹中工務店が開発した耐火集成材です。

2時間耐火の大臣認定を取得しています。

オメガウッド

株式会社大林組が開発した耐火単板積層材(LVL)です。

2時間耐火の大臣認定を取得しています。

T-WOOD

大成建設株式会社が開発した集成材と鋼管柱のハイブリッド材です。

1時間耐火の大臣認定を取得しています。

スリム耐火ウッド

清水建設株式会社が開発した耐火木質柱です。

1時間耐火の大臣認定を取得しています。

FRウッド

鹿島建設株式会社が開発した耐火集成材です。

1時間耐火の大臣認定を取得しています。

 
各社が開発している木造耐火の技術を紹介しましたが、
2時間だから優れている、1時間だから劣っている
と決めつけてはいけないと思います。
「木質のあらわし」という共通点以外は
コンセプトも構法もバラバラです。
コストとの兼ね合いもありますので、適材適所で採用されています。

各社とも「燃え止まり層」になる部分を設けて「芯材」(=荷重を受け持つ部分)に、

火災による温度上昇のダメージを与えないように、なおかつ大断面にならないように工夫しています。

燃エンウッド・オメガウッド・スリム耐火ウッドも燃え止まり層に

石膏ボードを使ったりしているので、純粋な木質材料オンリーではないから

ハイブリッド材なのかもしれません。

FRウッドは、難燃性の薬剤を燃え止まり層に注入することで

純木質耐火構造部材という点をセールスポイントにしています。

集成材・CLT・LVL・合板

無垢材

丸太から切り出した材料のことを無垢材といいます。

乾燥させて切り出した状態のものです。貼り合わせたりしていない木材です。

無垢材に対して、数枚の板材を貼り合わせて製作するパネルを以下で紹介します。

元になる原料と木の繊維方向の組合せで4種類に分類されています。

繊維方向をそろえる=強い向きをができる。

繊維方向を直交させる=弱い向きをなくす。

それぞれメリットがあります。

集成材

原料:ひき板

繊維方向:平行

 

集成材製造過程イメージ画像
図_集成材

 

CLT

Cross Laminated Timber(クロス ラミネイティッド ティンバー)の略称です。

原料:ひき板

繊維方向:直交

 

CLT製造過程イメージ画像
図_CLT

 

LVL

Laminated Veneer Lumber(ラミネイティッド ベニヤ ティンバー)の略称です。

原料:突板(つきいた)

繊維方向:平行

 

LVL製造過程イメージ画像
図_LVL

 

合板

原料:突板(つきいた)

繊維方向:直交

合板をベニヤと呼ぶこともありますが、ベニヤは薄くスライスした突板のことを示しています。

合板はベニヤを繊維方向が直交するように圧着させて製造されたものです。

 

合板製造過程イメージ画像
図_合板

 

まとめ

日本の建築基準法に適合できる(主に耐火)技術は確立されています。

15階以上の建築物に必要な3時間耐火、

その(15階分の)建物の荷重を支える強度の実現については今後に期待が膨らみます。

建築コスト、特にS造やRC造と比べて、木材構造にもメリットが出てきたら

加速度的に普及していく可能性を秘めていると思います。

施主さんに選択肢が増えることは望ましいことだと思います。

 
駆け出し研修生
新国立競技場でもそうですが、
隈研吾さんは木質のファサード好きですよね。
 
安藤忠雄さんがコンクリート打ち放しが好きなのと
似た感覚なのかもしれませんね。