マスコンクリート

概要

コンクリートの断面・寸法が大きく
セメントの水和熱による温度の上昇を考慮して
施工しなければならないコンクリートを
マスコンクリートといいます。

断面が大きいコンクリートは、
断面が小さいコンクリートに比べて
体積に対する表面積が相対的に小さくなります。
そのため、コンクリート表面からの放熱量と
コンクリート内部の水和発熱量のバランスが崩れると
温度分布が不均一な状態となり
=温度変化に伴う体積変化が不均一となる
コンクリートに温度ひび割れが発生します。

JASS5(日本建築学会)では、
この温度ひび割れに対する考慮を要するコンクリートを
マスコンクリートして取り扱うようにとされています。

コンクリート標準示方書(土木学会)では
おおよその目安として、スラブでは80~100cm以上の厚さの場合、
端部が拘束されている壁では厚さ50cm以上の場合を
マスコンクリートして取り扱う必要があるとされています。

内部拘束と外部拘束

温度ひび割れは、ひび割れのメカニズムの違いにより、
内部拘束による温度ひび割れと、
外部拘束による温度ひび割れの2つのパターンがあります。

コンクリートの材齢初期に
コンクリート内部と表面の温度差(=内部は温度が高く、表面は温度が低い)
によって、熱膨張の差によって表面に沿ってひび割れが発生します。
これが内部拘束による温度ひび割れです。

これに対して、材齢がある程度進み
コンクリート全体の温度が下降している時に
収縮変形が、既存の他の構造物や岩盤などに妨げられ
拘束の界面などに生じる温度ひび割れを
外部拘束による温度ひび割れといいます。
外部拘束によるひび割れは、
部材を貫通するひび割れに拡大するリスクがあり
防止しなければならないひび割れです。

温度ひび割れ

コンクリートに温度ひび割れが起こるか否かは
コンクリートの温度分布・温度解析を行い、
それから温度応力解析を行い、
その材齢でのコンクリートの力学特性と照らし合わせて
照査を行う必要があります。
=小難しい計算式が目白押しなので、特化している方(の記事)にお任せます。

温度ひび割れ対策

温度ひび割れの対策は、
・体積変化の抑制
・温度応力の低減
・ひび割れ幅の制御
この三本柱で構成されています。

具体的には

低熱ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、
高炉スラグやフライアッシュを混和した混合系セメントなど、
水和熱の小さいセメントを使用する。

単位セメント量を少なくするために、
スランプを小さくする。
粗骨材の最大寸法を大きくする。
細骨材率を小さくする。

パイプクーリングを行う。
パイプクーリングとは、コンクリート中にあらかじめ埋設したパイプに
冷水を循環させてコンクリートの温度上昇を抑制する方法です。
冷水の循環の開始は、コンクリートの打設と同時に開始するのが効果的です。
⇒内部温度が最高値に達してから行う=NGです。

マスコンクリートは表面の温度降下が急激なほど、または表面が乾燥しているほど
ひび割れが生じやすくなります
そのため、養生期間が終わったあともしばらく脱型せず
型枠を残しておくことも温度ひび割れ防止の効果が期待できます。
このとき、必要に応じて型枠の保温も行います。

乾燥を防止するためだとしても、表面を急冷させてしまうような散水は避ける方が良いです。

外部拘束が大きい場合の対策として
部材の寸法を小さくすると温度ひび割れ防止効果が期待できます

ひび割れ誘発目地の設置は
予期せぬ場所に生じる温度ひび割れを防ぐ効果が期待できます。

 
建築ではコンクリート製の外部廊下や
立上り手摺りのコンクリートなどは
3m毎に20mm程度の誘発目地で区画されていたりしますね