コンクリートの型枠・支保工

概要

型枠・支保工は、コンクリート構造体を形成するための
鋳型であり、所定の強度と剛性を有し、
位置・形状・寸法は正確でなければなりません。
型枠・支保工は、設計および施工上のミスが原因で
崩壊事故につながります
安全性についても特に設計段階から施工段階を通して、
十分に留意する必要があります。

型枠

型枠は、コンクリートに接するせき板と、
せき板を締め付け固定する締め付け材(締め付け金物)から構成されています。
コンクリートがせき板に付着することを防止し、
またせき板は、コンクリートからの取り外しを容易にする目的で
せき板の表面には剥離剤が塗布されるのが一般的です。

型枠に用いられる材料は
木板、合板、鋼製、アルミニウム合金製、プラスチック製などがあります。

木製・合板型枠

長所:加工が容易。経済的。
短所:強度が低い。剛性が小さい。耐久性が低い。

パネコートとは

合板の表面がウレタン塗装でコーティングされていて(山吹色で塗られることが多い)
コンクリートの表面をきれいに仕上げることができます。

鋼製型枠(メタルフォーム)

長所:転用回数が多い(=耐久性が高い)強度が高い。仕上がり精度が高い。組み立て解体が容易。
短所:重たい。加工が困難。さびがでやすい。

アルミニウム合金型枠

長所:鋼製型枠に比べて軽い(1/2程度)。転用回数が多い。
短所:高価。鋼製型枠に比べて剛性が小さい。

プラスチック型枠

長所:軽い。複雑な形状も量産できる。透明なものも作れる。
短所:衝撃に弱い。比較的高価。熱、紫外線に劣化する(=対候性に不安がある)

支保工

型枠を所定の位置に保持するためのものです。
コンクリートが打設されてから、
所要の強度が発現するまでの間、
有害な変形、破損、倒壊などが起きないように
強度・剛性の確認を十分に行う必要があります。
支保工の材料は、主に鋼製で補助的に木材を使用する箇所があります。

型枠・支保工に作用する荷重

型枠・支保工は、想定する荷重に対して
耐力を十分確保できているか一つひとつ確認しながら設計します。

鉛直方向の荷重

・コンクリート、配筋の重量(コンクリート:23kN/m^3、鉄筋コンクリート24kN/m^3)
・作業員の作業荷重(1.5kN/m^2)
・衝撃による割増し(適宜)
( )数値は参考値です。

水平方向の荷重

水平方向荷重は、支保工の倒壊事故の原因になりやすいので
水平力に対する耐力の照査は、入念に行う必要があります。

 
水平力で鉛直荷重を受けて伝える軸がズレて
鉛直荷重が斜めに作用し始め、
曲げ荷重が発生し曲げ破壊に至って倒壊、
という崩壊パターンの、最初のキッカケを防止する目的です。

水平荷重は、様々な要因で生じるが
正確な荷重を予測することはなので非常に手間でハードルが高いので、
鉛直荷重の5%(通常のサポートで支持する場合)もしくは
鉛直荷重の2.5%(組み立て鋼柱で支持する場合)を
水平荷重と想定して、耐力の確認を行います。

フレッシュコンクリートの側圧

コンクリートの型枠の設計にあたり、
重要な検討項目の一つが側圧に対する検討です。
液体の場合、その液体の密度と深さに比例した側圧が作用します(液圧)。
コンクリートの場合は、骨材の内部摩擦やアーチ作用
セメントペーストの粘性などの作用により
側圧が決定しますが、単純計算で算出するのは非常に困難です。
液圧で設計するのは、安全側の検討になります。
側圧は、液圧以上に大きな値にはなりません

側圧が小さくなる要因

・気温が高い
・凝結が早い
・スランプが小さい
・打設速さがゆっくり(時間あたりの打設高さが低い)

型枠・支保工の取り外し

型枠・支保工の存置期間は
建築と土木で考え方が若干異なります。

建築における支保工の存置期間は、
多層ラーメン構造のRC構造物を基準に定められています。
多層構造物は、下階から順にコンクリートを打ち継いでいきます。
そのため、型枠を支える支保工の存置期間は
JASS5では、設計基準強度の100%以上のコンクリート強度が得られたことが
確認できるまで、と規定されています。

土木における型枠の存置期間と取り外しの順序は、
各種の要因を考慮して定めることとなっています。
コンクリート標準示方書に参考値が示されています
厚い部材の鉛直または鉛直に近い面、傾いた上面、小さいアーチの外面:3.5N/mm^2
薄い部材の鉛直または鉛直に近い面、45°より急な傾きの下面、小さいアーチの内面::5.0N/mm^2
橋、建物のスラブおよび梁、45°より緩い傾きの下面::14.0N/mm^2