2022年コンクリート診断士試験 記述式問題(問題Ⅰ=建築)解答例

 
模範解答ではありません。
あくまで解答例であり、個人の意見です
ご注意ください。

問題文

内陸部の食品工場団地に立地する汚水処理施設。
RC造で供用開始から40年経過。
汚水処理施設内部に変状発生。
写真1:A部(水路)
赤枠部はコンクリートが断面欠損している。
黄枠部は骨材が露出している。
写真2:A部(水路に隣接する床面)
コンクリートのモルタルペーストが剥がれ、
骨材が露出している。
写真3:B部(曝気槽近傍の柱)
水平方向に配置されている鋼材が腐食し、
コンクリートが剥離。錆汁あり。
処理施設の設備と機能を図1に、
写真1~写真3の撮影場所を図1・図2に、
変状の状況を表1に、
コンクリート部材の概要は表2に、
流入する汚水の水質分析結果は表3に示されている。

 

図1_汚水処理施設の設備と機能

 

図2_A部(水路および水路に隣接する床面)の周辺の断面の概要

 

表1_写真の撮影場所と変状の状況

表2_コンクリートの概要
普通ポルトランドセメントを使用した普通コンクリート
海砂も使っておらず、特筆する内容無しのため割愛

表3_汚水の水質分析結果
(キーワードになる箇所が見出せなかったため)割愛

問1

写真1、写真2に示すA部(水路および水路に隣接する床面)の変状の発生原因を推定し、
その推定理由を述べなさい。また、常時水中の部分と水面から上の気中部分で
変状の程度に差が生じる原因を説明しなさい。

問2

写真3に示すB部(曝気槽近傍の柱)の変状の発生原因とその推定理由とともに述べなさい。

問3

A部およびB部における変状の発生原因に必要な調査項目を重要なものから3つ示し、
さらにこの施設を今後30年使用するための補修方法を提案しなさい。

解答作成手順

下ごしらえ

表1のA部の状況に
「強い硫黄臭」と書いてあります。
=「硫化水素が発生している」
ということに気付けることができれば、
解答のストーリー半分は構築することができるのではないかと思います。
更に、A部の変状は白色の生成物(石こう)が付着と書いてあるので、
硫化水素⇒硫酸による化学的浸食はほぼ確定と判断しこれを軸に回答メモを作成。

また、B部の柱の帯筋(フープ)のかぶりが、
一般的なフープのかぶり寸法は通常40ミリ以上必要ですが、
当該コンクリート柱のかぶり寸法はかなり小さい(20ミリしかない)こと。
二酸化炭素濃度が通常より高い環境に置かれていることから
B部の変状は、中性化によるものと判断し回答メモを作成。

水酸化カルシウム+硫酸=二水石こう

解答用メモ_問1

写真1、写真2ともにコンクリートのセメントペースト部が剥離し
粗骨材が露出している。
表1より、強い硫黄臭がしていることから硫化水素が発生。
また、変状部に石こうが付着していることから、
硫酸による化学的侵食が生じていると推定。
常時水中部に比べて、気中部(特に飛沫部)は
気中部の硫化水素が水に溶けて接触し化学的浸食を進展させたためであると推定。

 
受験当時は「硫化水素が水に溶ける⇒硫酸になる」と認識していました。
この間違いは、致命的な減点にならなかったようです・・・。

解答用メモ_問2

写真3より、柱のフープが腐食しコンクリートが剥離している。
表1よりかぶりが20ミリと通常のフープよりもかぶり寸法が小さい。
曝気槽近傍であるため、好気性微生物の酸化作用により
周囲の二酸化炭素濃度は、通常の建物内部よりも高い。
これらから、二酸化炭素によりコンクリートの中性化が生じ、
鋼材の不動態皮膜の破壊により腐食が進展し変状が発生したものと推定。

 
かぶり不足+二酸化炭素による中性化⇒鋼材の不動態皮膜の破壊⇒鋼材の腐食
という明確なストーリーを記述するのがポイントだと思います。

解答用メモ_問3

変状の発生原因の特定に必要な調査項目
1)電子線マイクロアナライザによるコンクリートの厚み方向の化学成分分布の調査。
2)フェノールフタレイン溶液による中性化深さの調査。
3)コンクリートの厚み方向の塩化物イオン濃度分布の調査。

 
3)は、変状の原因が塩害ではないことを確認する目的のためだけの調査なので、
減点事項かもしれません。
問題文に「3つ示せ」と記載されているため、
3つ書かないと大幅な減点となる(と思われるため)ので無理やり書きました。

補修方法
A部の化学的侵食を受けている範囲、
およびB部の中性化している範囲の、劣化したコンクリートを除去。
腐食している鋼材は、腐食部を除去し防錆処理を施す。
必要に応じて補強筋を配置し、ポリマーセメントモルタルで断面補修。
表面をエポキシ樹脂系の表面被覆で保護し、
劣化因子(硫酸と二酸化炭素)のコンクリートへの侵入を防止する。

まとめ

制限時間180分のうち、四肢択一問題を60分で終わらせ、
記述式問題に100分使いました。問1に300文字、問2に500文字、問3に200文字、
計1000文字で記述しました。
だいたい事前にシミュレーションしていた通りの展開で解答をすることができました。

土木の方の問題は、問題文を読んでも解答のストーリーを思い描けなかったので
建築の方の問題を選択しました。